エンジンオーバーホール編 (その2) 仮エンジン編

 結局、本命エンジンは別のエンジンをベースにして造ることになりました。しかし、完成するまでは随分時間が掛かりそうだなぁ〜 確実に車検までには間に合わないような気が・・・う〜む、車検切りたくないしどうすっかな・・・そういやぁ 今まで使ってたエンジンの部品が丸ごと一台分あるんだよなぁ それを組み直して取り敢えず積むかなぁ・・ あ〜あ〜はじめから解ってりゃここまでバラさなかったのにぃぃ〜(泣) ということで本命エンジンが完成するまでの仮エンジンを組むことにします。殆どの部品が再使用しまくりのケチケチエンジンなので、とても皆さんのオーバーホールの参考にはなりませんから軽〜く読み流してねぇ〜 良い子の皆さんは真似しちゃ駄目よぉ〜(笑)



 ここでケチケチエンジンを製作するにあたり問題となっているところを検証します(詳しくはバラシ編を参照)。問題はやっぱシリンダーヘッドだよなぁ〜 バルブガイドの高さはバラバラでステムシールの頭も飛んでるし、ヘッド面も金尺を当てると隙間があり歪んでいるので、ガイドの高さの統一と最小限面研は必須だよなぁ〜 ピストンに関してはそんなに磨耗してなかったので取り敢えずリング交換して、トップアイドラーの回転がおかしいので交換といったところでしょうか? あとの部品は再使用のケチケチ仕様です。キチっと組むなら交換しなきゃいけない部品ももっとあるけど仮エンジンだしあまり費用をかけてもね(苦笑)


シリンダーヘッド&バルブ 【写真上】
 「まず・・・ヘッドと・・バルブの・・カーボンを・・・落とします・・」ということで戦場カメラマンならぬ洗浄カメラマンの管理人です。本来ならばウェッドブラスをかけるのでホドホドで切り上げる予定でしたがトホホホです。バルブはボール盤を使用してサンドペーバーでカーボンを除去します。あまりピカピカの鏡面に仕上げても効果がないので適当に切り上げます。 カーボン落としをコツコツ♪ 燃焼室からコツコツ♪(by田中貴金属)


ピストン 【写真下左】
 オイル下がりを起こしていたのでピストントップにはカーボンがてんこ盛り〜(汗) スクレーパーで粗方落したらキャブクリーナー(パーマテックス)を使用して細かいカーボンを落とします。まぁ、本来であればメタルクリーン等の専用のカーボン落としケミカル剤を使用するところですが、キャブクリーナーは値段も安くて手頃だからね(苦笑)
ピストン&シフトドラム 【写真上】
 シフトドラムの表面をラッピングコンパウンドで軽く磨きます。まぁ溝を研磨した訳じゃないからシフトフィーリングは良くならないので気休めかな・・・時間があれば溝を研磨したりWPCなんかの表面処理をすればシフトフィーリングが良くなると思うけど、今回は時間も金も掛けられないしね(笑)


洗浄後の部品

 洗浄したパーツをトレイに並べます。カムチェーンやバルブスプリング、タペットキャップも再使用します。本来なら交換すべきですがプラグも洗浄して再使用です(苦笑) ヨシムラST-2カムシャフトもジャーナル部とカム山をボール盤にフェルトをセットして寸法が変らない程度に軽〜くラッピングします。くれぐれも布バフと青棒を使用して気合入れて磨いてローカムに加工しないようにね〜(爆)




 内燃機屋さんにヘッドを持ち込んで相談です。仮エンジンなのであまりお金を掛けたくない旨を伝え、バルブガイドの高さ合わせと修正面研、駄目になっている雌ネジのヘリサート補修もお願いしました。納期は約1週間で面研は0.2mmさらって、多少腐食が残っていますが問題ないレベルです。それよりもバルブガイドがユルユルだったそうで、浸透検査するとアウトかもなぁ・・・う〜む



カムシャフトの逃げ加工 【写真上】
 ヨシムラST-2は本来ヘッドに逃げ加工を施さないといけませんが施していません・・・う〜むZ1と比較すると逃げ加工は少なくて済むみたいですが、よ〜く見るとカム山の角が当った形跡が覗えます【画像上左】 この程度であればカム山の面取りをすればいけそうな気もしますが、今更ですがエアリューターで最小限の逃げ加工を施します。【画像上右】



 新品のインシュレーターをセットすると段付きが・・・【画像上左】 おっかしいなぁ〜ここは前回のオーバーホールの時に加工したはずなんだけどなぁ〜 どうやら古いインシュレーターは潰れて内径が小さくなるようで、通りで新品のインシュレーターだと段差が出来る訳だ・・・よってエアーリューターを使用して段付き修正を施します。あまりポートの奥までいじらずになるべく滑らかになるように仕上げます。【画像上右】



 
 シートリングの当たり面はカーボンの噛み込みにより荒れているのが確認できます【画像上左】 本来ならシートカットしたいトコですが擦り合わせのみで誤魔化します(苦笑) ここまで荒れてると手で擦り合わせするのは至難の業なので管理人はエアーツールを使っちゃいました(笑)
擦り合わせはエアバルブラッパーの動きを見れば解るけど回転させるのではなく叩きつけるように行います。【画像上右】は擦り合わせ後



ケースボーリング 【写真上】
 前回スリーブを打ち換えるのに伴いスリーブ外径に合わせてケースボーリングしているものの、ケースにスリーブが接触した痕跡があります。よってリューターで軽くさらって当たりを取ります。 スリーブアゲイン〜♪ 入れることさえ〜♪ 無い今が〜♪ 当たり取るチャンスよぉ〜♪ (浅香唯だよぉ!)


サービス&パーツマニュアル 【写真下左】
 エンジンを組むのにサービスマニュアルとパーツマニュアルは必需品です。でも輸出仕様だから中身は全部英文なんだよなぁ〜 まぁ、翻訳されたマニュアルもあるらしいけど写真と図解で何とか理解できるし、要は締め付けトルクと使用限度寸法さえ押さえられれば用は足ります。でも古いマニュアルなので記載はSI単位じゃありません(苦笑)
ガスケット 【写真上右】
 本命エンジンを製作するために購入した腰下のオマケに付いていたガスケットが2組! ひとつはべ○ラ製で、もう片方のセットにはセンターOリングやバルブステムシールまで入っている・・・しかも左上に純正部品って(汗) こんなの使ってオイル漏れしたら嫌なので肝心なトコはカワサキ純正品を使用します。でも、カバー類はケチケチ仕様なのでこれを使うかな・・・(苦笑)


計測 【写真上】
 マイクロメーターを使用してバルブとピストンピンの測定を行います。バルブステム径はIN標準6.965〜6.980 EX標準6.955〜6.970でリミットはIN・EX共6.90となっており、計測の結果最低でもIN6.90 EX6.965以上で使用限度を上回っています(笑)  また、ピストンピンも使用限度を上回っていますが社外ピストンなのでノーマルピストンピンの使用限度は参考にならないかな(苦笑)



 クランクシャフトは今まで使用していたものと、NEWエンジンベースから取り出したモノを測定して程度の良い方を使用します。サイドクリアランスは両クランク共OKですが、振れに関しては今まで使用していたクランクはリミットの0.1mmを大きく上回り0.2mmって通りで振動が大きい訳だ・・・NEWエンジンベースのクランクはホントに程度が良くて、振れ・位相ズレ共に殆どありませんでした(笑)



ピストンリング 【写真上】
 アメリカ製のピストンでもリングは安心のメイドインジャパンです(笑) リングは表裏があり、Tの刻印がある方が上になります。このTはTOPのTではなく帝国ピストンリング社のTで、Rが理研でNが日本ピストンリング社製だそうです。表裏を間違えて組むと断面形状が違うのでオイル上がりを起こすので組み付ける場合には注意が必要です。


ピストンポンチ 【写真下左】
 ピストンはそれぞれ気筒毎にピストン径を計測してボーリングしているし(ノーマルではそんなことしてないけどね)当然、当たりも各気筒で異なるので元に入っていた場所にピストンを戻します。マジックなんかで書くと洗浄すると消えて判らなくなるので、ピストン裏にポンチを打っておきます。
自作ピストンピンプーラー 【写真上右】
 ピストンピンはフルフローとはいえ常温だと渋くて入れたり抜いたり出来ません! その為の特殊工具がピストンピンプーラーなのですが、大した構造のモノでないので自作することにします。VP管のメクラキャップベースだとピストンにも傷が付かないし強度的にもベストかな(笑)


オイルストーン 【写真下左】
 全ての加工が終わったら組む前に洗油で洗浄しますが、その前にシリンダーやカバー類のガスケット面をオイルストーンで軽くさらっておきます。スクレーパーで取っても結構ガスケットの細かいカスが残ってたりするんだよね(苦笑)
オイルシール 【写真上右】
 あ〜あ これも本来交換しなくてもいい部品なんだよなぁ〜 オイルシールも塗装する予定だったので全部外しちゃいました。打ち込みにはソケットを使ったりするけど、こんな大きなソケットは持ってないので30mm塩ビ管のメクラキャップを使用しました。これなら傷も付き難いしね(笑)


ステムシール 【写真下】
 オイル下がりの元凶のステムシールも当然交換しますが、仮エンジンなのでバイトンを使用したりしませんし、ケチケチエンジンだからといって訳の分からない社外強化品なんてモノも使いません! 当然メーカー純正品を使用しますが、カワサキ純正ではなくスズキ純正のステムシールです・・・値段もカワサキの半値らしい?

 バルブガイドがユルユルということは、ガイド圧入部分からオイル下がりしているような気もするけど、打ち代えるとシートカットもしなければならず費用が嵩むことから、ガイド廻りに液体ガスケットでも塗って誤魔化すかな・・・ってまるでインチキ中古車屋みたいな手法です(爆) 因みにバルブスプリングやリテーナー、コッターまで再使用のケチケチ仕様です。オイオイ大丈夫かぁ〜(汗)


ミッション 【写真下左】
 ミッションは比較した結果、本命エンジンから外した方が程度がいいのでこっちを使用します。本命エンジンのミッションは定番のポリスミッションの新品を使うのでMKU用は使いません。残ったミッションはオク行きとも思ったけど、大した金額にならなそうなので予備にでも取っておくかな・・・(苦笑)
腰下組み付け 【写真上右】
 腰下はミッションをケースに仮組してドライバーでシフトドラムを回転させてミッションの入りを確認します。問題がなければクランクとクラッチハウジングをセットして合わせ面に液体ガスケット(スリーボンド)を塗ってケースを閉めます。その後オイルポンプを組んでエンジンを逆さまにします。


クラッチハウジング 【写真下左】
 ノーマルのクラッチハウジングは大抵ダンパースプリングが折れちゃってるんだけど、本命エンジンから外したハウジングは程度がいいです(笑) ファリコンの方は磨耗してるのでどっちを使うか悩むトコだなぁ・・・う〜む MKUはケースを割らないと交換出来ないので悩むところですが結局ファリコン製を使うコトに!
シリンダー 【写真上右】
 ベースガスケットは信頼性を重視してカワサキ純正品を使用します。センターローラーを入れてノックピンをセットしたらガスケットを載せてシリンダーを下ろします。まず2・3番のピストンから入れていきますが、ピストンリングの合口の位置がずれないように慎重に入れていきます。


車体積載 【写真下左】
 エンジンは全部組むと重くなるのでシリンダーを組んだ状態で車体に積載します。シリンダーは腰下をフレームに積載してから組む場合もあるみたいですが、管理人的にはピストンが入れづらいので車体に載せる前に組み付けます。オイルパンは異物を落したことを考えて仮組とします。
ヘッドガスケット 【写真上右】
 ヘッドガスケットはビトー&RDのメタルガスケットです。まぁ、水冷じゃないしメタルなのでそんなにシビアにならなくても大丈夫でしょう!ということで再使用です。表面のフッ素ゴムが斑になっているのでオイルストーンで軽くさらって、薄〜く液体ガスケットを塗って組み付けます(苦笑)


シリンダーヘッド

 シリンダーにアイドラーとテンショナー、ヘッドガスケットをセットしたら、センターOリング(これも信頼性でカワサキ純正)にシリコングリスを塗ってセットしてへッドを載せます。ヘッドナットの締め付けはサービスマニュアル通りの順番に何回かに分けて指定トルクまで締めていきます。ちなみにシリンダースタッド&ナットがAPEのクロモリなので締付トルクは50N・mとしました。


カムメタル 【写真下】
 カムメタルも再使用です。部品代をケチっているのもありますが、ヘッドが歪んでカムラインが狂っている可能性があり、新品メタルを組むとカムシャフトの回りが悪くなる恐れがあるからです。よってメタルに特に傷がないので再使用決定〜! でもどれがドコの場所に入ってたのか解らんな・・・(汗)
カムシャフト取り付け 【写真上】
 1・4番上死点でEX側のカムスプロケットの合いマークを合わせて、その次のピンを基点に28ピン目をIN側のカムスプロケットの合いマークに合わせます。(詳しくはサービスマニュアル参照) その後、カムホルダーをセットしますが、ホルダーの取り付け取り外しの時にネジ山を潰してしまうことが多いので注意します。ちなみにネジ山はリコイル済みです。



 アウターシムなのでカワサキ純正特殊工具(バルブリフターホルダー)を使用すると、カムシャフトを脱着しなくてもシム交換ができます。クリアランスはヘッド単体で大体合せておき、入れたシムの厚みと場所を記録しておきます。ちなみにヨシムラ指定のバルブクリアランスは0.2mmですが今回はIN0.15mm、
EX0.2mmで合わせました。シムは厚みの刻印【画像上左】が消えないように下側(タペット側)にして組み付けます。


上死点出し 【写真下】
 まず全円分度器を取り付けるために上死点出しをします。自作マグネットプレート【画像下左】をセットし、プラグホールからダイヤルゲージを突っ込みクランクを回して針が動かなくなったところが上死点です・・・がっ!実際には上死点付近ではクランクを回しても針が動かない角度が5度程あります。よってその動かない角度の中間を上死点として全円分度器を取り付けます。

 トップアイドラーとテンショナーをセットしたらバルタイの確認を行います。タペットにダイヤルゲージを当ててロブセンターを計測します。ちなみヨシムラST-2の指定値はINがATDC105度でEXがABDC107.5度です。今回は殆どずれていませんでしたが、ずれていればアジャスタブルカムスプロケットで合わせます。最後に手でクランキングして問題ないことを確認してバルタイ確認は終了となります。


 バルタイの確認が終わったら、ヘッドカバーを被せて補機類をセットしますが、ここから先のエンジンの火入れまでの作業は、次回のアップする予定の車体編でご紹介したいと思います。


編集後記

 以上が仮エンジン偏ですが、あくまでど素人のちょいバカオヤジが初めて一人で組んだエンジン(さすがに、車体にエンジン載っける時はオヤジとカミサンに手伝って貰いましたが・・・)なので、多少、作業手順に間違いがあったとしてもご愛嬌としてお許し下さい(苦笑) しかし、あれだなぁ〜 まぁ、なんとか形にはなるもんだなぁ・・って現行車に比べれば旧車なんて部品点数が少ないし、構造もシンプルで手も入れやすいのでネジ穴さえ駄目にならなきゃ簡単なもんです! な〜んてエンジンかけたら大ちゃんドバーっとオイル漏れ起こしたり、フライホイールやクラッチハウジングが外れてカバーを突き破ったりしてね(苦笑) ということで次回車体偏のエンジン火入れに乞うご期待!







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