梅小路蒸気機関車館(in京都)

 以前に京都の梅小路公園内にある梅小路蒸気機関車館を訪れた時の模様をご紹介したいと思います。今でこそ、各地で復活したSLが運行されたりしていますが、この梅小路蒸気機関車館は蒸気機関車の動態保存を目的として1972年に開設した歴史ある施設だったりします。実際に使われていた車庫を活用している点は横川の鉄道文化村と同じですが、こっちの方が全然古いです。ということで、何十年か振りに訪れる梅小路蒸気機関車館にタイムスリップです。




梅小路蒸気機関車館

 梅小路蒸気機関車館の入り口である資料展示館は趣きのある風格ですが旧二条駅舎を移築・復元したそうで蒸気機関車館の建物に相応しい造りです。ちなみに当初は日本国有鉄道(国鉄)により開設され、現在は西日本旅客鉄道の外郭団体が管理運営を行っており、入場料は大人400円子供100で営業時間は10時から5時半までとなっております。



展示物

 館内に入ると当時の券売機や時計、制服やタンブレット(今時使っているところあるのか?)といった展示物が出迎えてくれます。また、実物大の運転台も設置されており、蒸気機関車の運転の疑似体験することができます。【画像右】はお召列車用の機関車に施される装飾類になります。




ターンテーブル 【画像上】
 
扇形庫の前には転車台(ターンテーブル)があり、これに機関車を乗せて回転させることにより放射状に伸びる車庫に機関車を入れられるようになっていると共に、機関車の進行方向も変えることが出来ます。まぁ、現在では電車・機関車問わず前後に運転台があるから必要ありません。



C551 【画像上】
 
このC55はわずか62両しか製造されなかったことから、現存するのは4両しかないそうで、この梅小路機関車館に保存されているのは1号機になり準鉄道記念物に指定されているそうです。



ドック修理

 扇形車庫の中では展示車両だけでなく、実際に修理やメンテナンスが行われていました。あくまで、基本は動態保存ということですから当時さながらの作業風景を見ることが出来ます。本線上を走るSLやまぐち号なんかの全般検査もここで行われているそうです。



B2010 

 立山重工業製のB2010という蒸気機関車で、主に構内用に使用されていたものだそうです。形式のB2010のBは動輪が2軸であることを表しており、この表記は現在の電気機関車やディーゼル機関車でも同じです。



C51239
C5345
C59164


 B型が動輪2つならC型は動輪が三つの機関車です。D型と比較して動輪の径が大きく高速運転用として主に旅客用の機関車として活躍しました。よく知らているところではC62(シロクニ)が有名ですが、特急列車「つばめ」と活躍し、エレガントでスマートないでたちは貴婦人との愛称で親しまれました。




D511&D50140
D5246


 C型が動輪3つならD型は4つの機関車になります。この形式は蒸気機関車だけでなく現代の機関車にも受け継がれておりEが5つ、Fが6つの動輪となっています。まぁ、車で言えば2輪駆動・4輪駆動の違いみたいなもんです。で、D型で有名なのはD51(デゴイチ)ですが主に貨物用として戦時中に大量生産された車両です。



C561

 菊の紋章や除煙板に飾られた鳳凰からするとお召し用の蒸気機関車のようです。お召し用機関車とは・皇后・皇太后がお使いになるために特別に運行される列車を牽引するための機関車です。そのため、一般市民が乗る列車を牽引する機関車と異なりゴージャスな装飾が施されています。



 扇形車庫は高い天井に煙突が設置されており、いかにも蒸気機関車用の車庫といった造りです。流石に、展示用に使われている車庫なので天井も白く綺麗ですが、当時はきっと煤で真っ黒だったに違いない・・・しかし味がある車庫ですな。



エンブレム 【画像上】
 
ヘッドエンブレムや車両製造会社のプレートも展示されています。川重(現:川ア重工業車両カンパニー)や日本車両や日立製作所等、現在も鉄道車両メーカーとして活躍している名前もSL時代から確認することが出来ます。新幹線なんかもそうですが、同じ車両でも製造メーカーが異なっていたりします。




 バイクや車のエンジンは一般的に内燃機関と言ったりしますが、それに対して蒸気機関は外燃機関と言われます。まぁ、作動流体の膨張圧力を利用して熱エネルギーを運動エネルギーに変換するのはどっちも同じですが、作動流体自体が燃焼するかしない違いで区分けされているようです。画像は作動流体(水)を蒸気にするためのボイラーと煙管で、水の中に煙管が多数通ることにより伝熱する仕組みになっています。




 ボイラーの頭のこぶ部分は蒸気だめになっており、その中の加減弁【画像上左】で圧力を調整することにより機関速度を調整しており、レシプロガソリンエンジンでいうところのキャブレターやインジェクションといった役割になります。また、こぶの後方にはボイラー安全弁やヘッドライト等の必要な電気を作るタービン発電機【画像上右】が設置されています。




 画像は蒸気機関のピストンとシリンダーになりますが、シリンダーへ蒸気を送り、作動流体の圧力でピストンを往復させる仕組みは基本的にはレシプロガソリンエンジンと同じです。ちょっと違うのはレシプロガソリンエンジンではピストンの一方方向から圧力を受けるのに対して、蒸気機関は表と裏の両面に弁装置で交互に蒸気を送り往復運動させています。一見全く異なる機械のように見えますがガソリンエンジンと相通じるところがあります。



主連棒

 ピストンの往復運動はクロスヘッドを介して主連棒から動輪に伝えられます。往復運動を回転運動に変換する仕組みもレシプロガソリンエンジンと同じでで、主連棒はコンロッド、動輪はクランクシャフトといったところになるかと思います。動輪の主連棒が連結している反対側にウェイトが付いてフライホイールの役目をしているところも、レシプロガソリンエンジンと似ています。



コンプレッサー 【画像上】
 
車体側面にはコンプレッサーが設置されています。作動音と動きはまるでICUの人口呼吸器みたいですが・・・ってテレビドラマでしか見たことないけど(汗) このコンプレッサーで作られた圧縮空気は隣のエアータンクへと溜められて、ブレーキを作動させるために使われたりします。この辺の圧縮空気を利用した仕組みは電車や大型バスやトラックのブレーキシステムと同じです。



ブレーキシリンダー 【画像上】
 
ブレーキに関しては動輪をブレーキシューで挟み込む一般的なもので路面ブレーキと言われるものだそうです。まぁ、車輪の外周を挟み込むなんて鉄輪の鉄道にしか出来ない仕組みですが、車輪の横側やディスク盤を挟みこむディスクブレーキの鉄道車両もあります。



オイルポンプ・蒸気分配管 【画像上】
 
【画像左上】はオイルポンプになります。回転したり往復したりする以上は潤滑油は必要で、シリンダーやコンプレッサー等の高圧蒸気に晒される場所はシンリダ油を、その他の軸受等にはマシン油が使われます。【画像右上】は蒸気分配管になります。



スチーム号 【画像上】
 
動態保存(実際に動かせる状態での保存)されている車両の中で、全般検査と呼ばれる定期検査を受けていない車両は、本線上を走行することが出来ないので館内展示用として専用線で運行されています。その館内展示用がスチーム号で乗車料金を別途大人200円払えば乗車することが可能です。

                   スチーム号動画         


編集後記

 さて、今回の梅小路機関車館は如何だったでしょうか? 本物のSLを走らせているところは全国にいくつもありますが、これだけの数の蒸気機関車を動態保存しているのは全国でもこの梅小路機関車館くらいです。まぁ、車、バイクで言えばモテギのコレクションホールといった感じですかね? 白い蒸気や黒煙を噴く姿からは車やバイクとは全く関連がないように思われますが、こうやって仕組みを考えながら観察してみると、合い通じるものがあり面白いかと思います。2016年には以前紹介した交通博物館とこの梅小路蒸気機関車館が一体化して国内最大級の鉄道博物館を建設するそうですから、皆さんも機会があれば一度足を運んでみては如何でしょうか?











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