おとなの工場見学(川崎重工 明石工場)

 前回、企業ミュージアムであるカワサキワールドをご紹介しましたが、今回は「おとなの工場見学」として川崎重工業鰍フ明石工場を紹介します。実は、この明石工場は我々の愛機が製造されている工場でもあるのです。まぁ、自分のMKUは車体番号からアメリカのリンカーン工場で製造されたものみたいだけどね(苦笑) 20年近く前に、ヤマハ発動機の磐田工場でバイクの製造ラインを見せて貰ったことはありますが、川崎重工は今回が初めてです。カワサキワールドは企業のPR施設として入館料を支払えば誰でも入館することが出来ますが、流石に工場見学ともなると「見せて下さ〜い!」「はい、ど〜ぞ!」ってな訳にもいかず、今回は川崎重工業鰍ウんのご好意により工場を拝見させて頂けることになりました。




明石工場 【画像下左】
 
山陽本線の西明石駅近くに川崎重工の明石工場はありますが、あまりに工場が広い為に駅からタクシーで移動します。工場内においても受付で手続きをしたら、そのままタクシーにて目的の建物まで行くことが出来ました。何でも工場の大きさは東西に約1400m、南北に約480mもあるそうですから、工場内を歩くだけでも結構シンドイです(汗)
入口 【画像上右】
 
管理棟の玄関入口にはZX-6Rと産業用ロボットが展示されていました。まず、応接室に案内され名刺交換をしたら通常はビデオを見るのですが、訪れた時間が遅かった為に先に工場内を案内して貰いました。工場内はマイクロバスにて移動(3人しかいないのに・・・)し、案内係のおねーさんが同乗してくれます。


工場見学
 
まず最初はバイクの製造ラインの見学です! 工場入口には各部品メーカーの納入時間割が貼られており、ジャストインタイム生産システム(トヨタ生産方式)が採用されているそうです。これにより納入業者が錯綜することなく、必要な部品を必要な時に必要なだけ揃えることが出来きるそうです。
 さて実際の製造ラインですが、まずフレームがリフトのように吊下げられて移動しており、軽い部品から取り付けられ、その後、コンベアに乗せられ重い部品が取り付けられます。また、ラインには同一車種が流れてくるのではなく、全く異なる車両が次々に流れてくるのが意外でした(驚) 当然、そこには絶対に部品を間違わないシステムが構築されています。完成した車両はガソリンとオイルが入れられベンチ室にてエンジンやブレーキのテストが行われ出荷されます。その為、場内をノーヘルでバイクが走り回っており、訪れた日は雨天だったので超すべり易そうな塗り床でコケる奴がいないか心配になりました。
 ちなみに、ここで造られる車両の8割以上は輸出向けだそうで、国内向けは2割にも満たないそうです。また、変わったところだと陸上自衛隊向けの艶消し塗装のKLXが生産されていました。構内道路の真ん中には直線のみですがフェンスに囲まれた約1kmのテストコースがあります。残念ながら訪れた日は雨天の為、走行風景は見られませんでしたが、その他の走行テストはオートポリスで行っているそうです。
 さて、バイクの製造ラインを後にして次に産業用ロボット工場へ移動します。えっ 何?バイクの製造ラインの画像は無いのかって? う〜ん、残念ですが場内の撮影は禁止だそうです。マイクロバスに乗ってすぐに案内係のおねーさんに釘刺されました・・・まぁ、当たり前と言えば当たり前のことですけど、以前にヤマハの磐田工場に行った時は、前日に写真を撮ったバカタレがいたせいでスクーターの生産ラインしか見せて貰えなかったし(泣) ということで産業用ロボット及び非常用発電機のガスタービンエンジンのラインを見せて貰い工場見学は終了となります。


 さて、バスで管理棟に戻る途中にとある工場棟の2階に案内されました。階段を登って扉を開けると迎えてくれたのは・・・ワオッ! グッドタイムズコレクション! そこにはマニアなら泣いて喜ぶような名車が眠っていたのでした。まぁ、現行車派の方にとってはただゴミバイクかもしれないけどね(苦笑)
グッドタイムズコレクション 【画像上】
 
入口にはZX-10Rのカットモデルが展示してあり、カワサキモーターサイクルの歴史をイメージしたポスターがいい味出しています。唯一この展示室の中だけは撮影することが許されました。ちなみに見学時間は約10分間の自由見学です。やったー!


 うなぎの寝床のような長〜い展示室には、中央の廊下をはさんで左側に主にレーサー関係、右側に市販車関係が展示されています。一番手前にあるのはKDX125SRかな?


 モトクロス関係の車両の先にはロードレーサーが展示してあり【画像上左】はKR-3とA7、【画像上右】がA7RSとH1Rになります・・・って管理人が知っているのはH1Rくらいだな(苦笑)H1RはマッハV(H1)をベースにした空冷トリプルのレーサーです。


Z1000(1974) 【画像上】
 
Z1000というネーミングですがZ1000A1〜2ではなくZ1がベースであり、年式からもそれは確認できます(Z1000A1は1977年から)。エンジンは66mm×66mmから69mm×66mmまで拡大され105PS/8500rpmを発揮し、ヨーロッパ耐久選手権で初タイトルを取った車両だそうです。


KR750(1975) 【画像上】
 
H2Rを水冷化したのがこのKR750で、アーヴ・カネモトなんかがメカをやってた時代のレーサーです。当時のWGPは2スト500ccが最高峰なので、それとは別のF750というカテゴリー用のマシンだそうです。そう言えばこの頃はヤマハにもTZ750があったっけ!


KR1000(1981) 【画像下】
 
出たぁ〜 KR1000! レーシングフェアに展示してあった奴は1982年のフロント16インチのモノサス仕様ですが、こちらは1981年の前後18インチのツインショック仕様です。個人的には1982年型より、この1981年型の方が断然格好いい! こんなの見てたらゴディエ・ジェヌーの1135R欲しくなってきちゃったよ〜 ヤベ〜 誰か俺の妄想を止めてくれ〜!
レリーズ & ステム 【画像上】
 
クラッチレリーズは何故か右側(クラッチカバー)に変更されています。左側を確認出来なかったのですが、多分ドライブスプロケットを交換し易いようにカバーを取っ払うためにレリーズを右側に移設したのだと思われます。トップブリッジは溶接跡から中空構造みたいで、まるでタバックスのステムだな・・・って逆か!タバックスが真似たのか(笑) そう言や〜 あの変態オヤジ(失礼!)カスタムの世界大会で優勝してたっけ(驚)


KZ1000S(通称:S1) 【画像下】
 
つ、ついに、来た〜! KZ1000S(通称:S1)! 地球に生まれて良かった〜(by織田裕二) う〜ん、ゼッケン21番かぁ・・・エディが乗った本物かなぁ〜 案内係のネーチャンに聞いたところで解んねーだろーし・・・でも、実戦で使われた車両はビキニカウルが殆ど装着されなかったことからエディが乗った車両ではないように思います。
 やっぱいいねS1・・・何てったってたった30台しか造られなかった幻の名車だからなぁ〜 最近管理人の周りではZ1000R2だのZ1100Rだのローレプ(正確には違うけど・・)が増えてきているけどやっぱ格好いいよね! 買える、買えないは別としてローレプが憧れのバイクって人多いし!こいつを見れただけで今日は大満足です(^.^)



【画像上左】ZXR-4(1990)

【画像上右】ZX-R750R(93-96)

【画像左】はZXR-7(1993)でTT−F1最後のFIM世界耐久選手権シリーズ第5戦鈴鹿8時間耐久レースで悲願の初優勝した車両です。スポンサーは伊藤ハム、ライダーはスコット・ラッセルとアーロン・スライトでした。

周回数207周
タイム8:01'13''713


 【画像上左】はKT250TRIALだそうで、カワサキ製のトライアル車なんてあったの全く知りませんでした。
【画像上右】のKV175(イナゴ?)も知らんな〜 スコップが装着されているけど自衛隊車両でもなさそうだし・・・どうやら、KE175ベースの農場向け(海外モデル)車両みたいです。
【画像右】のAV50は知ってるぞ〜 AV50→AVゴジュウ→AVジョユウ→AV女優(失礼しましたっ!)


 工場見学においては、帽子と保護眼鏡、工場騒音で案内が聞こえないので受信機とイヤホンを装着しています。しかし、ここでの案内はありません。まぁ、各車両の前のボードに個々の車両のことは記載してあるしね! でも、解らないことがあっても案内係のおねーさんに聞いてはいけません。何故なら彼女達は暗記した原稿通りに案内しているだけですから、質問したとこでまず答えられません(苦笑) だから、はじめから聞かないのが礼儀ってもんなのです。


ZX-12R & KDX125SR 【画像上】
 
【画像上左】の2000年モデルのZX-12Rは蚊の口みたいなラムエアダクトが特徴的で、自主規制前のフルスケール360kmメーターだったなぁ〜 その後のU型は300km規制モデルだったけど、300km規制って意味あるの? 【画像上右】は管理人のセカンドバイクでもあるKDX125SR(1986)です。まぁ、管理人のは最終モデルだけどね(笑)


ZX-10 & 1000GTR 【画像上】
 
【画像上左】はZX−10(1988)でGPz1000RXのエンジンをベースにダウンドラフト化してパワーアップを図り、アルミフレームの車体と組み合わせたものの今となってはRXと共に全く見かけることはありません。 【画像上右】は元祖ツアラーの1000GTR (1986)です。GTRがそんな昔からあったなんて全く知りませんでした。


GPZ400R & 750TURBO 【画像下】
 
前後16インチのずんぐりむっくりしたGPZ400Rは学生の頃、友人が乗ってたので借りたことがあります。当時はレーサーレプリカ全盛だったので野暮ったく感じたなぁ〜 そう言やぁ あの頃はターボも流行っており、カワサキはGPz750ベースの750TURBOを投入しました。でも輸出モデルだったし、どっちにしろ免許も無かったら全く縁は無かったけどね(苦笑)
 KZ1000Rローソンレプリカ通称R1と言われている奴ね! エディローソンのAMAスーパーバイクチャンピオンを記念して発売したモデルで、KERKERのマフラーが純正装着され、生産台数が少ないことから高値で取引されています。展示車両は新車ではありませんが、フロントフォークにコーションステッカーが残っていることからノンレストア車両と思われます。管理人の仲間でレストアするのにこれらのコーションステッカーを複製している変態がいるんだけど(笑)


 【画像下左】はZ550LTD(1981)で、国内向けアメリカンのZ400LTDをスープアップした輸出モデルと思われます。 【画像下右】KZ650SR(1978)は日本名Z650LTDでザッパーベースのアメリカンモデルです。
Z1000MKU(1979) 【画像上】
 
うぉぉぉ 管理人の愛車Z1000MKU(1979)もあるじゃないか〜 でも、これリアフェンダーが長いし、テールカウルとフレームサイドのリフレクターが無いからヨーロッパ仕様だね! 新車ではないから後からカワサキが集めたんだろうなぁ〜 そう言えば昔、MKUの新品ノーマルマフラー持ってたけど、ヤフオクで処分しちゃったっけ(苦笑)


900スーパーフォア(1978)

 MKUが殿堂入りしていれば当然Z1も必要でしょう!とは言うものの近年では市場価格は逆転していますけどね(苦笑)  昔はMKUなんてZ1より10万円くらい安く売ってたのに・・・ こちらもZ1としては珍しいイエローボールのヨーロッパ仕様で、フルオリジナルっぽいですが北米仕様はブローカーに買い占められちゃって程度の良い車両が見つからずにヨーロッパから仕入れてきたのかな?


空冷トリプル

 カワサキと言えば空冷トリプルを忘れちゃイカンでしょう! という訳で【画像上左】はカワサキワールドにもあった350SSで、こちらは1973年式のフロントブレーキがドラムからディスクブレーキになったモデルです。【画像上右】は管理人の世代では馴染み深いKH400(1978)で【画像右】は500SS(1975)マッハVになります。でも、750SS(通称H1)が見当たらなかったなぁ〜


 空冷トリプルと並んでカワサキ車を代表するバーチカルツイン勢も展示してあります。まぁ、カワサキというよりはメグロ(目黒製作所)色が強いけど・・・【画像上左】は650RS(1973)通称W3、【画像上左】はW1スペシャル(1969)になります。
 【画像左】はカワサキペットM50(1969)だそうで、こんなバイクがカワサキにあったの全く知らなんだ・・・しかも郵政仕様だし(汗) 管理人が知ってるカワサキ車の原付なんてAR50とAV女優(AV50)くらいなもんだ(笑)


 案内係のおねーさんは何も言わなかったけど時間オーバーだったそうです(汗) もしかして、あまりに興奮している管理人を前に切り出せなかったとか? いや〜 ここに居たら時間忘れるって! レジャーシート広げてここで酒飲んだら楽しいだろうなぁ〜 花見ならぬバイク見ってやつ(笑) 展示車両を見てるだけでマジでつまみいらんぞ! 今回は大変貴重な車両を見せてくれた川崎重工鰍ウんに感謝です(ペコリ) 最後に管理棟に戻り応接室で明石工場のビデオを見て工場見学は全て終了となります。


パンフレット 【画像下】
 
工場見学の資料として頂いた明石工場のパンフレットとカワサキモーターサイクルヒストリー(1952ー2009)とフルラインカタログ2012です。フルラインカタログ以外はなかなか入手できないので貴重かと思いますが、モーターサイクルヒストリーの中身は海外向けなのか全て英文でした(汗)
 帰りは社員用の売店まで案内してくれて、そこでタクシーを待ちます。ここではカワサキグッズが2割引で販売していました・・・失敗した!カワサキワールドで買うんじゃなかった(泣) う〜ん、ここでしか手に入らないモノといえば・・・おっ!社員用の技術服が売ってるじゃん! それって支給じゃないの?って聞いたら支給される数以上に必要な場合は自腹で購入するのだそうです。(注:あくまで冗談で言っただけで本当に買ったりはしていませんよ〜)



編集後記

 今回は、川崎重工鰍フご好意により明石工場を見学する機会に恵まれました。前日には神戸工場の方を訪れており(実は本来の目的はこちら)、神戸工場では主に船舶を建造しているため、肥溜めより大きなシリンダーライナーや背丈より高いコンロッドが転がっており、我が家よりも遥かに大きい船舶用巨大エンジンも見ることが出来て、小人(借りぐらしのアリエッティ)にでもなった気分になります。通常はこれらの製造工場に足を踏み入れられる機会はなかなか無いと思いますが、明石工場の見学ツアーを行っているカワサキ正規代理店も僅かながらあるみたいなので、機会があれば参加してみるのも面白いかもしれません。
 今回は大変貴重な体験をさせて頂き、カワサキフリークの管理人にとっては一生の思い出となりました。手配に尽力してくれた川崎重工鰍フ担当者および関係者の皆様には深く感謝いたします。






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