マークJエンジン製作日記(加工編)

 前回のエンジンオーバーホール(その2)仮エンジン編から随分時間が経過してしまいましたが(1年半超か・・・)、今回は本番エンジン編としてマークJエンジン製作日記(正確にはZ1000Pの部品を多用していることからマークPエンジンと言った方がいいかな?)の加工編をご紹介したいと思います。今回製作するエンジンは経年劣化したMKUのエンジンをベースにするのではなく、まだ入手可能なZ1000Pの新品部品を多用することにより、将来に渡り末永く安心して乗れることをコンセプトとし、車検上の問題からエンジン形式の変更が生じないようにMKUのクランクケースのみを使用して製作しました。





クランクケース 【画像下左】
 まずベースとなるエンジンですが、後期型のKZT00AEエンジン(MKU系)を使用します。シリンダーヘッドレスでしたが幸いにも非常に程度良いものを入手することができました。しかし、一度もバラされた形跡が無いのは大変良いものの、処女エンジンはベースガスケットがこびり付いてケースとシリンダーを分離するのにエライ苦労します(汗)
クランクケース 【画像上右】
 シリンダーのスタッドボルトを抜くのにはパイプレンチを使用すると嘘のように簡単に外すことが出来ます。ベースエンジンは新品が手に入らないケース・シフトフォーク・シフトドラム等のみを使用します。その他ドナーエンジンから摘出したミッション&クランクシャフトは程度が良かったので仮エンジンへ移植しました(笑) ドナドナドド〜ナ〜♪



冶具製作 【画像上】
 J系の部品をドッキングするためには、クランクケースを面研したりケースボーリングしたり色々な加工が必要となります。加工するにはケースをフライス盤のベットにセットしなければならないので、まずフライスのベットにケースを固定する冶具を製作しました。まぁ、これがあると加工がパラマウ〜んと楽よ!


ケースボーリング 【画像下左】
 スリーブを入れ替えてスリーブ外径が太くなると、クランクケースにスリーブが入らなくなるのでクランクケースをボーリングしてなくてはなりません。今回はスリーブの入れ替えは行いませんが、GPzシリンダーを使うので1100ccスリーブに合わせてケースボーリングしました。これでシリンダーがクランクケースにスコスコ入るようになります(笑) ドドスコスコスコらぶ注入〜!
シリンダードッキング 【画像上右】
 ケースボーリングを済ませたのでシリンダーをドッキングしてみます。シリンダーは排気量の刻印(1.089L)から分かるようにGPz1100Fのものです。クランケースは当然MKUのものですが、J系クランクケースは前側エンジンマウントがラバーマウントのとなっていますので、リジットのMKU系のクランクケースであることは画像でもお解り戴けると思います。


石膏 【画像上】
 クランクケースのセンターにあるカムチェーントンネルの形状を把握するのに石膏を利用します。今回使用したのは吉野石膏の歯科技工用で、電子天秤で重さを量り正確に水と配合します。配合を間違えるとベシャベシャになったりするので注意が必要です。しかし石膏なんて使うのは小学生以来だな・・・。


型取り 【画像上】
 カムチェーントンネルは底と土手を粘土で構築します。もちろん粘土は子供の教材から拝借です(苦笑) 粘土はその他にもクリアランス計測にも利用することが出来て非常に便利です。ちなみに石膏を取り外し易いようにカムチェーントンネル内壁にはグリスを塗っておきます。お肌すべすべニベアスキンミルクしっとり200g・・・なんのこっちゃ(汗)


ブロック製作 【画像上】
 出来上がった石膏の型を見本にカムチェーントンネルに埋め込むブロックを製作しますが、まずフライス盤を使用して荒削りを行います。頭の部分は後工程にて溝を切削したりするためにバイスに咥える部分です。複雑な形状なので咥えられないのと、加工を行う場合の基準面として最終加工が終わるまで残しておきます。


後側ブロック 【画像下左】
 荒削りのあとは石膏の型を忠実に再現します。 えっ! いったいどうやって造ったのかって? それは「秘密のアッコちゃん」です・・・古いなこのギャグ(苦笑)  まぁ、ぶっちゃけゴットハンドで造りましたけど、もう 二度と造りたくないです(汗) 
もう二度と造らない♪ 君の部品〜♪(get along Together by 山根康広)
前側ブロック 【画像上右】
 前側のカムチェーンガイド受けのブロックも石膏で型取りしてゴットハンドで製作しました(笑) 前側は後側と異なり取り外す必要がないので、ガタつく場合は最悪耐熱アルミパテでも塗ったくって押しこんじゃえばOKでしょ!ってオイオイそんなんで大丈夫かぁ〜(汗)



GM-8300

 流石にゴットハンドと言われた管理人でも、手作業で忠実に再現することは不可能です・・・で結局、耐熱・耐油エポキシアルミパテの力を借りてしまいました(苦笑)。今回使用したのはブエニー技研のジーナスGM-8300で、-40℃〜200℃対応、高温でもへたらず寒暖を繰り返すヒートサイクルにも追従するしなやかさをもっているとのことなので、今回マイエンジンで身をもって実証してみます。



前側ブロック 【画像上】
 ブロックが完成したら、まずケースに入れた状態でバイスに咥える頭の部分の4面を削って面を出します。そうすることにより今後の加工における基準面となります。GPzケースの前側のカムチェーンガイド受けの角度を測定して、頭の面を基準に傾斜部分を削っていきます。


後側ブロック 【画像上】
 後側のブロックもバイスに咥える頭の部分の面を出してカムチェーンガイドが収まる溝を構築しますが、まずはじめにGPzケースを見本にカムチェーンガイドのピン位置を測定し、ピンを差し込む穴をあけておきます。そのピン位置を基準にカムチェーンガイドの可動範囲を考慮して切削部分をブロックにけがいていきます。


後側ブロック切削後 【画像上】
 カムチェーンガイド溝を切削した後のブロックですが、カムチェーンガイドがガタつかないように溝幅はガイド幅+αとしました。またカムチェーン軌道部分は、カムチェーンが暴れることを考えると溝の幅は出来るだけ広くしたいところですが、ブロックの肉厚が薄くなるので注意が必要です。ガイドをセットして可動に問題がなければ頭の咥える部分はコンターマシンで落としてしまいます。


肉盛 【画像下左】
 MKUクランクケースにJ系シリンダーを乗せるとカムチェーントンネル前側のベースガスケットの噛み代が足りません、よってケース上面の足らない部分に肉盛りをしていきます。一見汚く見えますが面研後、はみ出た部分はベルトサンダーで仕上げるのであまり気にする必要はありません。まぁ、あまり目立つところじゃないしね! 
ラーメン つけ麺 ボク面研 OK〜!(by狩野英孝)
後側ブロック裏側 【画像上右】
 頭を落としたブロックはアッパーランクケースごと最小面研します。そのためにはブロックをケースに固定しなくてはなりません。よって、ピロボールを使用してカムチェーンガイドのピンを下側に引っ張ってブロックをケースに固定します。



最小面研


 後側のブロックをアッパークランクケースにセットして上面を最小面研します。そこで、どこを基準に面研を行うか? 当然、面研するくらいだから歪んでますよね? ここで冶具クランクシャフトの登場です! こいつをクランクケースにセットしてこいつを基準に面研します。このことにより、各気筒のクランク軸からの高さを統一することが出来るって訳!


前側ブロック 【画像上】
 前側のブロックは後側と異なり下から差し込んでいるだけなので固定する必要があります。よってケースに6mmタップを立てて押さえプレートで固定するようにしました。また、アッパーケースのカムチェーントンネル前側にはカムチェーンガイド受を切削して構築します。


ケース切削

 面研が終わったのでクランクケースとシリンダーがドッキング可能となりますが、ケース上面の肉盛を多目に行っているので、ガスケット形状に合わせてエアリューターで余分な部分を削っていきます。この時、リューターが暴れてあ“−なんてコトにならないようにガムテープで養生しておきます。超硬ロータリーバーで荒削りが終わったらフラップホイルで最終仕上げを行います。

前側ブロック 【画像上】
 加工終了後のアッパークランクケース【画像上左】にGPzシリンダーをドッキングします。画像の通り全く違和感ないのが確認できます。恐らく色を入れちゃえば解らないレベルだと思います。



 J系エンジンのカムチェーンガイドの取り付けは、熱膨張や遊びを解消するためにホルダーをダンパーで押さえて固定しています。よって、ノーマル同様にブロックにダンパーを入れられるように前後ブロック共ダンパー溝を構築します。ちなみに、ブロックは熱膨張を考慮して表面をペーパーで磨いて全体的に小さくしています。これで前後のブロックの完成になりますが、こいつが出来ればマークJエンジンの製作は9割方完成になります。



ポリスヘッド 【画像上】
 最終型のポリスヘッドですが、ポートには段付き修正が施されており、GPz1100FのインシュレーターをセットしてもZ系と異なり段付きが生じることはありません。ちなみにこのヘッド、最終型のZ1000P24の品番で注文したところ主用車種はZ1100となっていました・・・でもGPz1100Fとはバルブ径や燃焼室形状が異なるから一体何用なんだろう?


加工準備 【画像上】
 新品ポリスヘッドに禁断のポート研磨を施すためにガムテープで養生します(汗) 正直言って貴重な新品ヘッドにド素人が手を加えてしまうのは、勿体無いから♪ 勿体無いから♪ 勿体無い〜か〜ら〜♪ あげないっ!(byおニャン子)のような気もしますが、後から加工するのは大変なのでこの際済ませておきます。また今回、ポート研磨を施すのに当り新たに超小型のエアーリューターを購入しました(笑)


禁断のポート研磨 【画像下】
 はっきり言って表面を均す程度のポート研磨なんか施したところで効果なんてたかが知れています・・・そもそも前記の通り段付き修正はメーカーで済ませてあるし、Z系のヘッドと比べればポートも拡大されています。じゃあ、何で施すのかと言うと、あのブラマヨ吉田の顔みたいな鋳物肌が許せないんじゃぁ〜 ということでただの自己マンのオナニーチューンです・・・(苦笑)
禁断のポート研磨 【画像上右】
 以前は一生懸命鏡面加工を施したものですが、逆に流体が張り付いて吸気効率が落ちるとのことなので、ポート形状は変えずに表面を均す程度で終わりにします。本来ならばガイドを抜いて加工するところですが、新品ヘッドのガイドを抜いてシートカットするのも勿体無いので抜かずに出来る範囲で行います。



干渉 【画像上】
 さすが最終ヘッドだけにリフターホールにもはじめから逃げ加工が施されマンダムな仕上がりです。しかしながら、10mmリフト超のカムを組むとヘッドカバー取り付けボルト部分の盛り上がり(黄色の○)に接触します(汗) う〜ん、おしいな、干渉するのここだけなんだけどな・・・。


逃げ加工 【画像上】
 干渉する部分をエアーリューターを使用して逃げ加工を施します。あまり多く削りすぎると強度的にもよくありませんので何度もカムを仮組しながら最小限の切削に留めます。まぁ、WEBの365やヨシムラST-1なら殆ど干渉しないんだろうけど・・・。


ヘッドカバー 【画像上】
 ヘッドだけじゃなくヘッドカバーについても仮組みをし、カムシャフトを回転させて干渉しないか確認します。ヘッドカバートップのクリアランスの確認には粘土を使用し、ガスケット無しの状態でもこれだけクリアランスが確保されているのでZ系に比べ随分余裕があります。


面取り 【画像上】
 新品カムシャフトはジャーナル面やカム山を傷つけないようにガムテープで養生し面取りを行います。表面はモリブデンコートをしてあるせいか黒色になっており、摺動性の向上にはWPC処理が有効みたいですが、所詮ド素人のちょいバカオヤジが組むエンジンに施したところで「おまじない」程度の効果と思われるので素のまま使用します(苦笑) まぁ、「おまじない」に何万もお金を掛けてもね(苦笑)



 
シフトドラム&
   シフトフォーク


 Jミッションの組み込みは、コンバートベアリングさえ入手できれば干渉するシフトドラムとシフトフォークを切削すれば可能ですが、ドックの噛み合いや各ギヤの遊び調整といったノウハウがあるようです。また、ニュートラルポジションファインダーを生かすための加工は、専門ショップでないと出来ないので、Jミッション組み込みに関する全ての加工を外注に依頼しました。



オイルポンプ 【画像上】
 GPz系リリーフバルブ付オイルポンプは10年前は入手できましたが現在は廃盤となっています。でも、ポリスの新品ポンプにタップ立ててリリーフバルブを付ければ結局同じなんだよね(笑) 以前にリリーフバルブ無しポンプで今は無き某社のオイルクーラーを付けて真冬にエンジン掛けたらフィルターカバーが歪んで「大ちゃんドバァ〜っと♪」おもらししたことがあります。要は真冬に固いオイルなんか使うと逃げ場が無くなりそれだけオイルプレッシャーがかかるということ!



ボーリング 【画像下左】
 さて、ここまで作業が終わればやっとエンジン一式を塗装に出すことが出来ます。エンジンの塗装は釜に入れて高温で焼付けすることからスリーブが浮いてくるので注意が必要です。そのまま面研なんかするとオイルリークの原因になります。よってプレスで押して正規の位置に戻します。
ボーリング 【画像上右】
 シリンダーのボーリングはボーリングマシンでも可能ですが、ダミーヘッドを用いてフライス盤で行います。シリンダーはヘッドとクランクケースにサンドイッチされることにより僅かながら歪みます。よってその状態を再現しボーリングするための冶具がダミーヘッドになります。



ホーニング 【画像下左】
 フライスで荒削りをしたら最終的な寸法はホーニングで仕上げます。ホーニングは砥石をシリンダーに圧着させながら回転させてクロスハッチという研ぎ跡を残すことにより、オイル保持がよくなり適切な潤滑面を形成することが出来ます。
ボアゲージ 【画像上右】
 ピストンクリアランスはワイセコ指定値の5/100としました。指定クリアランスになっているかはボアゲージで確認しますが、ど素人のちょいバカオヤジの管理人がボアゲージで測定しても目盛りが0で、指定値に仕上がっているのが画像でも確認できると思います。



お知らせ
 はっきり言ってここでご紹介した内容は特殊な手法であり、とても皆様にお勧めできるメニューではありません。よって、こんな方法もあるんだな・・・という参考程度の理解に留め、これを見て真似する方はまずいないとは思いますが、もし真似する場合は当方では一切責任を負いかねますので全て自己責任でお願い致します。また、加工方法や費用についてのご質問についても一切お受けできませんのでご了承下さい。ということで次回はいよいよ組立編ですので、おたのしみに!








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